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入学式が終わり、新しい同級生、クラスメイト…と言っても運良く京子、ハル、花と同じクラスだったから特には変わりないのだけど。
どうも、心が落ち着かない。
まるで、このあとに何かが、それも普通じゃない何かが起きるような気がして。
それは私の全てを変えてしまうような気がして、ならない。
「凪ちゃん?凪ちゃんっ」
「ふぇっ?」
気づくと京子が何やら心配そうに私の顔を見ていて、私は呆然とする。
よく見れば既に放課に入っていて、周りはとても騒がしい。
京子が私の額に手をあてる。
「疲れたの?何だかずっとボーッとしてるみたい」
「あ…大、丈夫…」
「あんまり信用出来ないなぁ。そう言っていつも倒れてたのに」
図星を突かれ、何も言えない私に苦笑し、軽くコツン、と額を小突かれた。
ビックリして京子を見ると、やっぱり少し寂しそうな顔をして私に視線を合わせる。
「無理には聞かないよ…でも、何でも言ってね?私に出来ることは何でもするから」
やっぱり京子は優しい。
なんて思いながら私は京子の手を握って頷いた。
実際にはまだ感覚だけで確証がない不安感。
少し、敏感になりすぎていただけ。
「本当に大丈夫。ありがとう、京子」
「…なら、いいの」
「うん」
これから用事があると言った京子と別れて、少し遅い帰宅をする。
気がかりと言えば、やはりディーノの失踪が頭を離れない。
確かに仕事は色々大変な人だが、それでもいつも携帯に連絡をくれていたのだ。
今はそれすら音無。
それが余計に不安を掻き立てて、私は無意識に携帯を取り出し、開いたディスプレイにメールも着信もないことを確認すると、落胆した。
…骸様なら、知ってるかな…
ボスが言うには、ディーノと骸様は確か一番最近まで任務を共にしていたと言っていた。
それならば、骸様なら何か解るかもしれない。
そう思い、アドレスから骸様の名前を探す。
ところに。
「ねぇ、キミそこの並高の子?」
前に急に現れた、どこかの制服を明らかにだらしなく着た男3人組が私の進行を阻むようにとおせんぼする。
何がなんだかわからなくて、とりあえず頷いて見ると何故か騒ぐ人達。
「アタリじゃね!?めちゃめちゃ可愛いし!」
「あの噂、やっぱガセだったんだよな~」
ゲラゲラ笑いながら言われた言葉に違和感を感じた。
一体並盛高校にどんな噂があるのか。
聞いてみようかと思った途端に腕を掴まれた。
「ちょっ…」
「オケ行こうよオケ!オールで!」
「お前、下心見えすぎー」
「うっせーよ!」
…なんとなくわかった気がする。
これがもしかして、骸様が言っていた“ナンパ”ってヤツかもしれない。
それならば早く、逃げなければ。
絶対に捕まってはいけないと言われていたのに、既に腕を掴まれていては話にならない。
いっそのこと大声で助けを求めようかと思ったのだが、男性の一人の肩にまるで幽霊のように手が置かれた。
「退きなさい。学生」
「んだぁ!?」
男子学生が勢いよく振り返った途端3人、そして私も凍りつく。
声をかけたのはにこやかな人だったが、その後ろには厳ついスーツを着た人達がずらりと並んでいた。
…ここ、日本だよね…?
思わずそう思い、助けて貰ったハズなのに、何故かそのようなホッとした気持ちになれない。
既に男子生徒は逃げて、私だけとその集団だけが夕暮れの路地に残っていた。
春といってもまだ肌寒く、風が私とその集団の間を吹き抜ける。
「貴方も大変ですねぇ。あぁも言い寄られてはいずれ喰われてしまうでしょうに」
笑顔で黒いことを言うスーツの人に頭が、本能が何故か危険だと私に告げる。
指が震える。
身体を無意識に支えながら、私はただ黙って目の前の男を見ていた。
「ご安心を。私は取って喰いはしません…まぁ、そちらにもよりますが」
笑っていた目が、一気に凍えた。
あやふやだった恐怖が、確信に変わる。
ナンパなんて比じゃない。
この人達は、私を殺せる。
そういうマイナス思考が、全身を駆け巡る。
「…跳ね馬ディーノが失踪したことはご存知でしょう」
「……っ」
「では、同じく六道骸も失踪したことはご存知でしたか?」
骸様が…失踪?
ディーノと同じく?
私は手にしていた携帯を落としそうになる。
今まで助けてくれていた人達の失踪。
なんとなく、感じていた違和感。
一体、私に何を求めているの?
私をどうしたいの?
「二人から何か預かっていませんかねぇ…何か小さな物」
首を横に振るが、“本当ですかねぇ”なんて言いながら懐に手を入れる。
出てきた物を見て、小さく悲鳴をあげた。
恐らく、中型のジャックナイフ。
銀色が夕日に反射して、チカチカと私の目に映る。
「言う通りにした方が、幸せですよ?」
ジリジリと近寄ってくる、嘘臭い笑顔とジャックナイフ。
そのナイフが私の喉を捕らえようとした時、いきなり背後に身体が傾く。
途端に集団がなぎ倒されて、ジャックナイフを持った人が驚いたようにその光景を見ていた。
「……キミ達、死刑決定」
そう耳元で聞こえたのと、見覚えのある学ランが視界を掠めていた。
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