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声が、上手く出ない。
それは、以前の恐怖を思い出したから。




「…っ!」

「あぁ、そこまでおびえなさんなぁ」




相変わらずケラケラと軽い笑いを溢しているが、その軽さがとても危ない何かを打ち消す為の物だと言うのを私は知っている。

彼が、おしえてくれた。




「…なんの、用ですか」

「いんえ?中々興味深いことをしていらっしゃるご様子なんで」

「…興味深い?」




その、笑っているだけで何も考えていなさそうな男性は私を見ると、思い出したように手のひらに拳でポン、と叩いた。




「名乗ってませんでしたねぇ。李王章と申します」

「り…おうしょう?」

「中国で、マフィアやってますがな」




マフィア。

私の背中に冷や汗が伝う。
ディーノや骸様がマフィア関係だとは知っていたし、納得もしていた。
どこか常識的なマフィアとは違って、こんな優しい人たちがやるものなのか、なんてことも思った。

でも目の前の人は違う。
本当に、危険な感じがする。




「キミ、雲雀恭弥をしりたいのでしょぅ?」

「…!」

「当たりですかぁ。いやぁ青春ですなぁ」




何が青春かは知らないが、一瞬で見抜かれてしまった。




「…それが、何」

「教えて差し上げましょうか?」

「…っ!?」

「彼は教えてくれませんよ。教えたら君が拒絶するかも知れませんから」

「拒絶…?私が?」




やっぱり私が何か関係しているらしい。
無関係でないなら、尚更知りたい。
彼は一体何を隠し、何を背負おうとしているのか。
どうして、私が拒絶するのかを。




「…」

「信じてもらえませんかねぇ…じゃあ、これはご存知?」




相手が指した人差し指に視線を送ると、口が動く。
そして、私は目を見開いた。














「貴方のお父様とお母様と彼が繋がりがあった…というのは」













「…っ!」




ガバッと音を立てて起きた。
外を見ればもう生徒が下校している時間。


…なんて、夢を、


あの人達と他愛ない話をしている自分なんて、今では一番の幸せな時間であり、最も重い罪の時間だ。

最近、彼女が何かしら僕のこと、僕との関係を知りたがるような顔をするが、知られたくない。

彼女は覚えていないだろう。
なんせ何年も前の、半年間だけなのだから。

一緒に過ごしたのは。

楽しい思い出は、悲惨な事件により彼女の記憶を閉ざした。
僕も、会いには行かなかった。…行けなかった。


僕に会ったことで、彼女があの事件を思い出し、狂ってしまうくらいなら、僕を忘れて幸せになってほしい。

思い出したなら、自分を攻めないで、“お前が悪い”と僕を恨んでくれれば、まだいい。



何より怖いのは、彼女が僕を責めることなく、自分を追い詰めること。

優しい、変わっていない彼女なら、十分あり得ること。




「…全く、困ったね…」




跳ね馬は、この現状をよく思ってはいなかった。
僕がこれでいいと言ったことを、卑怯だと、逃げていると。




『お前と凪は、共有出来るじゃねぇか。その“悲しみ”を、抱きあって泣けばいい』




そんなこと、出来るハズがない。














「…っどうして、貴方がお父さんとお母さんを、」

「死んでしまわれたんですよねぇ…10年程前に」




どうしてそこまでこの人は知ってるの?
私は何を知らないの?
彼は、何か知ってるの?














「…彼が、貴方のお父様とお母様を殺したんですよ」












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