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煮え切らない自分が悪いという事は、わかっている。
今まで彼がそれについて口にする事はなかったけれど、時々、酷く苦しそうな表情を浮かべ私を見ている事も知っていた。


そう、私は知っていて尚、知らぬ振りをしていたのだ。


時間はまだあると言い聞かせ、指折り歳月を数える矛盾。
何も言わず唇を噛みしめる彼に、私は甘え続けてきた。




『君が時々、わからなくなるよ』


これは、答えを出す事から逃げてきた罰。
私の為にずっと我慢してくれていた彼が、もう限界だと言葉を吐き出す。そんな彼を前に、私はただ涙を流しごめんなさいと繰り返す事しか出来なかった。




『違うよ凪、そんな言葉が欲しいわけじゃない』


わかっている、彼が何を望んでいるのか。
それなのに私は、その言葉を紡いであげる事が出来なかった。




『……少し、距離をおこう』


ごめんなさい、最後までその言葉を吐き通した私に彼が告げた言葉は、赦すわけでもなく、だからと言って終わりを告げるわけでもない曖昧な言葉。


彼の最後の譲歩に気付いてしまった私は、彼がいなくなった後も暫くその場から動く事が出来なかった。

何て自分勝手な涙、泣きたいのは、きっと彼の方だと言うのに。



歪んだ視界は、
まるで自分の心のようだと思った。


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