7.Sorry.You should go to the sofa.

「お前…今日ソファな。」
考えれば考えるほど意味が分からなくなるから、考えることを放棄して約一ヶ月。
オレはこの謎の共同生活にいつまでたっても慣れないままだ。
「…恭弥、おしょうゆとって。」
「ん。…沢田、この漬け物どうしたの。自家製?」
「ああ、こないだ良いお塩があるって草壁さんに聞いて…クロームと一緒に買いに行ったんです。」
「ふうん。結構いいね。」
「僕も漬けるの手伝って…って、ソレ聞いて戻さないでください!ルール違反です。」
「取り箸だから平気だろう?」
クロームがここに住んでいるのは、良い。むしろ、大歓迎。
オレの霧の守護者だし、いくら自分で身を守れるからといって廃墟に女の子が住んでいるなんてやっぱり良くない。
クロームをこっちに呼べば、当然のように付いてきた保護者…も、まあ、わからなくもない。
なんていったってクロームは「かわいい僕の」なんだし。(後に理由はそれだけじゃないって分かったんだけど、まあそれは別の機会にでも。)
わからないのは雲雀さんだ。
口を開けば「群れるな」「咬み殺す」の彼が、意外にも一番すんなりこの共同生活に馴染んでいるその事実。
もしかしたら、と思うことはひとつあるのだけど、オレは今でもそれを信じられないでいる。
「なぎ、」
「?」
「口の横、付いてる。」
半熟の目玉焼きを頬張った彼女の口の端に残った黄色を雲雀さんの指がなぞる。
ううん、この目はやっぱりそうとしか思えないよなあ。
オレの直感が正しければ、雲雀さんはきっとクロームに恋しちゃってる。それも結構重症な部類で。
「ありがと。」
「どういたしまして。」
二人の間にほわんほわんと花が飛んでいるのが見える気がする。
うん、うん、可愛い可愛い。
こんな平和な恋愛なら、オレ応援しちゃう。
アジトも壊れないし、雲雀さんも機嫌良いし、これは所謂「一石二鳥」ってヤツだ。
「あ、ずるいです!雲雀恭弥!僕だって気付いてました!」
しばらくオレの隣でぶーたれてた骸ががたりと立ち上がって雲雀さんに指をさす。
「…お前は本当に空気読めないな。あと、格好付かないから。」
「え、」
「付いてる。」
溜息を吐いて手近な布をひっつかんでやたら美形な顔(でも、中身および嗜好は残念なヤツだ。)を容赦なく拭ってやった。
ちょっとはコレで静かになるだろう。っていうかしてくれ。
「ちょ、ボンゴレ!それは台ふきです!痛い痛い!」
相変わらずほわんほわんと花をとばしている二人を横目で見ながら、邪魔の入らない時にでも確かめておくことが必要かもな、と算段した。
「と、いうことで骸、…お前今日ソファな。」
「え!?何の話ですか!」
寝室がもう一つ必要になる日も、もしかしたら近いかもしれない。
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