7.Sorry.You should go to the sofa.

「クハハ!可哀想な君!」
雲雀さん(と、骸)の誤解を解いてから二日。
食卓の空気は重たくもないが、どこかしらぎこちない。
「恭弥、取り皿ちょうだい?」
「…あ、あぁ、うん…。」
「?」
今まであれでどうやら自覚が無かったらしい雲雀さんは、前回の一件からクロームを意識しまくっている。
よくよく見れば耳まで赤いし、皿を渡すときの手なんて小刻みに震えちゃっている。
これが「ボンゴレ最強の男」と同一人物なんだから恋っていうものは良くも悪くも影響力があると思う。
ちらりと隣に目をやれば、骸は骸でそわそわと落ち着きがない。
娘のように大事に大事に育ててきた(のかどうかは微妙なところだけど)クロームが、宿命のライバルである雲雀さんに持って行かれちゃうかもしれないんだから、当然と言えば当然だろう。
それでもケンカを吹っかけたり、挑発をしていかないところを見れば、少しは雲雀さんのことを認めているのかもしれない。
多少過保護すぎるところもあるが、なんだかんだで骸はクロームの幸せを願っているのだから。
それにしてももどかしくてしかたがない。
雲雀さんが思った以上に純情だったのは、俺の隣に座る保護者にとっては朗報かもしれないが、俺としてはこのぎこちなくて、見ているこっちが恥ずかしくなるような空間はちょっと耐えられないのだ。
(んー…雲雀さんの気持はわかったけど…問題はクロームだよなあ。)
鈍感なのか、経験がないからわからないだけか。おそらく両方だと思うけれど、この態度の変わり様を見て、何も気が付かないのはある意味凄い。
こうなったら、最後の手段。直接、クロームに聞いてみるしか手はないのか…。
「あのさ、骸…お願いがあるんだけど、」
「はい、」
俺は(あまり頼りにしたくないんだけど)藁にも縋る思いで骸に頭を下げた。





「と、いうことで、」
「…。」
腕を組んだ骸が雲雀さんを鼻で笑った。
「クハハハ!可哀想な君!今日は君が、ソファをどうぞ!」
「…なんのつもり。」
名付けて、「雲雀さんを追い出してクロームの気持を聞き出そう大作戦」。
骸のお願いならクロームも断らないだろうし、雲雀さんはもともと一人が好きなんだからこの作戦は必ず成功するだろう、と予測したのだけど。
「ふん、誰が君の命令なんて聞くものか。」
「何ですと!」
しまった、雲雀さんの長年培われた骸への対抗心の方が強かった、か。
この作戦は失敗、新しい作戦をねらなくちゃ、と思ったその時、クロームが俺の前に立った。
「恭弥…ごめん、今日はボスと、骸様と、話したいことがあるから…ソファで寝てくれると、嬉しい。」
「…わかった、」
正直、これはちょっと意外だった。
雲雀さんがクロームの言うことを素直に聞いたのはもちろん、クロームの方が「話したいことがある」と言ってきたのだ。
これは、もしかするともしかするかもしれない。オレの中の超直感がびびび、と何かを捉える。
「あのね、ボス、骸様…」
ぱたん、と閉じたドアをじっと見つめたクロームは、ゆっくりと振り返って小さな口を開いた。
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