06.敵にまで悪い虫
今日は久しぶりに私が内務に選ばれた。
だから、嬉しくてうれしくて、しかもボスは恭弥と一緒に仕事をさせてくれたの。
私は本当に嬉しかったの。
恭弥も機嫌が良かったから、ボスには本当に感謝したわ。
利権とか、土地の話しには少し苦労したけど、恭弥が側にいてくれたから何とか出来た。
すっごく楽しかった。
でも、

「ねぇ、クロームちゃんは何が好き?僕はマシュマロなんだ〜」

「あ、あの・・・」

「ふふ、困った顔も可愛いね」

さっきからミルフィオーレボス、白蘭が私の部屋に来ている。
これからボスとの会談があるはずなのに、何で私の部屋に来ているのか全然分からない。
はっきり言うと仕事の邪魔だ。
私の机の上に乗り出しているから資料が取れない。
恭弥は今、部屋を外していない。
どうしよう。この人もボスだから、ぞんざいに扱えない。
私が困っていると、白蘭は私の顎を持って上に持ち上げた。

「クロームちゃんって肌白いよね。うん、マシュマロみたいだ」

「ぇ」

「このままたべ、」

白蘭が何かを言おうとした瞬間、銀色の輝くものが私と白蘭の間を通り抜けた。
白蘭が後ろに飛び退く。

「わっと」

「いい加減にしたら君」

「きょう、や」

恭弥が帰ってきた。
帰ってきたけど、すっごく不機嫌だ。
殺気が洩れていて、少し怖い。

「ふふ、恭弥君怖いなぁ」

全然そんな風には聞こえない声で白蘭が答える。
その態度が恭弥を怒らすのに。

「噛み殺す」

やっぱり。
しかも2人は戦闘態勢に入った。
私の目の前で恭弥がトンファーを取り出し、白蘭も匣を取り出す。
これは危ない。2人から流れる殺気は本物だ。
この2人が本気に戦えばどうなるのか、赤ん坊でも分かる。

「あ、あの!!」

止めようとして声を掛けた瞬間、ドアが開かれた。
自然と私たちはドアの方を向く。

「探したよ白蘭」

「・・・や、やっほう綱吉く、ん」

そこには頬を引きつらせたボスが立っていた。
ボスが歩いてくる。
ただそれだけなのに、身体が動かない。

「まったく、探した。どうしてここにいるのかは後で聞くよ」

「えっとね、」

私は唾を飲み込む。
恭弥の方をチラリと見ると、彼も身体が動かないみたい。冷や汗を掻いていた。

「ほら行くよ白蘭」

ボスは白蘭の襟首を掴むと、歩き出した。
ズルズルと引き摺られて白蘭はボスと一緒に出ていった。
出て聞くとき、ほんの少しボスが済まなそうな顔をした、ように見えた。

「はぁ、なんだったんだ」

恭弥が息を吐く。
私も息を吐いた。身体が痛い。

「ボスがあんなに怒ったの、初めて」

「ああ、まったくだね」

ふっと私たちは見つめ合った。
どちらかともなく、笑いがもれる。

「ふふ、恭弥、起こり過ぎよ」

「笑い事じゃないよ・・・」

「ふふ、ごめんなさい」

「まったく、君のことになると、感情が制御できないだけ」

私は目を開く。
恭弥はどこか顔が赤い。

「だからあんまり他の誰かに触らせないで」

「きょう、や」

恭弥はまだ顔が赤かったけど、私も彼に負けないほど赤いと思う。
だって、こんなに熱いんだもの。
自然と目線が下がっていく。

「僕、これでも嫉妬深いんだからね」

「っ」

「まったく、敵はボンゴレだけじゃないって事か」

ポツリと恭弥が何かを呟いたけど、私には聞こえなかった。
恭弥が私の頭に手を置いて、優しく撫でる。
どことなく彼の手が震えていた。

「さ、仕事を終わらそうか」

そう言って、彼の手が離れていった。
少し残念だと思っていたら、

「早く終わらして、2人で食事にでも行こう」

そう言われたら、頑張るしかないわ。
私は笑顔で答える。

「うん!行きましょう!」
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