雪が降る。
真っ白な結晶達。
暖炉の薪が音をたてた。
炎が揺らめく。
凪は窓に左手を当てた。
結露した窓の水滴が手につく。
手のひらの温度をどんどん奪っていった。
凪は手が冷えてくるのさえ構わず、ずっと手を窓につけてた。


一瞬、暖かい風が凪の後ろから吹く。
次の瞬間、背中から抱きしめられていた。


「身体、冷えるよ」


「きょうやさん・・・」


窓越しに視線が合う。
凪は苦笑した。
恭弥は左手を凪の左手に重ねた。
そして手のひらを包み込む。


「ほら、こんなに冷たくなって」


恭弥は眉を寄せた。
凪は苦笑するばかり。


「どうしてずっと窓とにらめっこしてたの?」


恭弥は冷たくなった凪の手を窓から外させ、
自分の頬につける。


「暖かい・・・」


ぽつりとこぼした凪に恭弥はため息をついた。


「ここまで冷たくなるなら端から窓に手なんてつけないでよ」


「ごめんなさい・・・ただ、見ていたくて」


凪は恭弥を見上げてフワリと笑った。
恭弥は怪訝な顔をする。


「何を?」


凪は左手を恭弥の頬から外すと、
また窓の方に手を持って行った。


「同じだと思ったの」


「あぁ、」


やっと恭弥は凪の言おうとしている事が分かった。
そっと凪の指にきらめく宝石に指をはわせる。


「確かに、そうだね」


恭弥はとても優しい瞳でその宝石を見た。
凪の左手に輝く宝石。
外で降り注いでいる結晶と同じ美しさ。


「恭弥さんがくれた、私の雪の結晶」


凪は嬉しそうに恭弥を見上げた。
恭弥も凪に笑い返す。
そして凪の身体を回転させ、自分と向かい合わせにした。


「愛してるよ、凪。僕のプロポーズを受けてくれてありがとう」


自然な動作で恭弥は凪の左手を取ると、
薬指で光る宝石に唇を落とした。
一瞬、呆けた顔をした凪だったが、
すぐに顔を赤くして恭弥の首に腕を回して抱きつく。


「私っ、私もありがとうっ私を選んでくれてっ」


恭弥も凪の背中に腕を回す。
お互い、強く抱きしめあう。
腕を緩め自然に見つめ合い、額をくっつけた。


「幸せだね」


「ええ、幸せよ」






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