窓の外はハラハラと粉雪が舞っている
白は彼女の色だと思う
どんな色にも染まることの出来る白
そんな彼女が選んだのは漆黒だった
視線を窓から室内に戻せば白いドレスとベールを纏った彼女の姿
何もせずとも愛らしいその顔には化粧が施され、それがあの男の為だと思うと少し悔しい


「・・・骸様、やっぱり嫌ですか?」


戸惑いがちに掛けられた声にあの男とのやり取りを思い出す


「・・・今、何て言いました?」
「結婚することにしたから、凪と」
「・・・誰が?」
「君ってバカ?僕以外に誰がいるっていうのさ」
「バカとは何ですか、バカとは!それに結婚なんて早すぎます、クロームはまだ19歳なんですよ!?」
「だから凪の20歳の誕生日に入籍するんだよ。未成年じゃなければ親の同意はいらないからね」
「・・・」
「凪が気にしてるのは親よりもむしろ君なんだよ、六道」
「・・・本当なんですか?クローム」
「はい、骸様は初めて私を必要としてくれた大切な人だから。だから恭弥との結婚を認めて欲しいんです」
「・・・僕が反対したらお前は泣くのでしょう?僕はクロームに幸せになって欲しい、この気持ちに嘘はありません。だから・・・雲雀恭弥、クロームを泣かせたら許しませんから肝に銘じておきなさい!」
「分かったよ、凪はちゃんと僕が幸せにする」
「あ、ありがとうございます、骸様・・・っ」
「反対しなくてもお前は泣くんですね、ほら涙を拭いて笑って下さい」


二人の結婚を承諾して数日後、クロームからある事をお願いされてしまった
結婚式の日に僕が花嫁の父親役としてバージンロードを一緒に歩いて欲しいと
はっきり言って驚愕した
父親役の件も勿論だが、それ以上にあの群れることを嫌う男が結婚式を挙げる事実に
きっとクロームの事を想っての決断だろう
これは当日に雪でも降らなければいいがと何とも見当違いな事を考えて、思わず承諾してしまっていた
ハッと正気に戻って訂正しようとしたが、嬉しそうに笑う彼女の姿を見たら言いだせる筈もなく今日に至る、と


「いくら僕でもここまで来て嫌だなんて言いませんよ・・・クローム、幸せになるんですよ?」
「はい、骸様」


式の時間になり、二人で紅いバージンロードをゆっくりと歩き始める
中程まで来ると白いタキシード姿の雲雀恭弥に花嫁を委ね、二人は共に祭壇へと向かう
その後ろ姿にこれで良かったのだと言い聞かせながら自分の席へ
誓いの言葉に誓いのキス
厳かに進行していく式を横目に窓を見れば先程と変わらず降り続ける粉雪
あぁ、やはり雪が降ったなと思いながら二人の幸せを願った


12月の花嫁

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