*クロームが、雲雀さんに会いに並中へ行くのが日課になっている設定














「クロームちゃんはどう思ってるの?ヒバリさんのこと」




並盛中学校のグランドの……どこだろう、ここ…
部活中の人たちがよく見える、ベンチのあるグランドの隅っこ。


仲良くなれた女の子の友達との会話。
日課になりつつある、並中に通うことで、あの人に会うこと以外で人に会うのは初めてかもしれない。
並中に来たところを気づかれ、そのままこうしておしゃべりをすることになった。


「きょ…京子ちゃん!!唐突すぎです!!!」


「え?そうかな…?でも、ハルちゃんも気にならない?」


私を置いて進められる、私への質問の話。
私は、今何を聞かれたっけ?


「それは…ハルだって、気になりますけど……」


『どう思ってる』って?
私が何で?


「クロームちゃん、最近ヒバリさんによく会いに行ってるって言ったでしょ?私達、気になってて。」


ヒバリサン……「ヒバリキョウヤ」?


「ひ…ヒバリさんとは、どういう関係なんでしょう!?何でクロームちゃんは、ヒバリさんに会いに…!?」


2人がワクワクすることなんかないと思うのに、何でこの2人はワクワクしてるんだろう。


何となく、自分が2人の期待している答えをしないことを分かっていた。




「………最近会ってるけど、なんでもないよ。」


















「ヒバリって、髑髏のこと好きなのか?」


見回りの途中、群れるなと注意しに行った(はずだった)草食動物達の内の一人に、ふいに言われた一言。


「バカ!急に何いってんだよ!!!」


「そうだよ、何でこのタイミングに!?」


焦る他2人に対し、ひょうひょうとしている野球部のエース。


「だってよ、こういう時じゃないとヒバリに会えないし、聞けないし」


何しにここへ来たんだ。
面倒くさいことになりそうだと直感する。
こういうことになるなら、ほうっておけば良かった。


「でもさ、ツナ達も気にならね?2人最近よく会ってるし。」


イライラする僕の様子に気にもかけず、話は進んでいく。
そう聞かれた2人は、まんざらでもなさそうだった。




「………………どうなんだよ、お前。クロームと。」


ワオ。
最初に何をいってるのかと言っていた君が聞くのか。


聞かれるまでもないんだけど。




「………最近会ってるけど、なんでもないよ。」


















さらりと答えた私に、目を丸くする2人。
思っていたことを言っただけなのに、そんな反応をされると、悪いなという気分になる。




「じゃ…じゃあ、何でヒバリさんと最近会っているのですか!?」


「…それは…」


―――骸様が気にしているから―――


なんて、骸様を知らない2人には言えない。




「あの人を見ててって、ある人に言われたの。」


ある人って?と、疑問は残るだろうけど、そこまで間違ってはいない。



「………ちょっとはヒバリさんに、その気は無いの?」


「京子ちゃん!?」


さっきからズバズバ聞きますね!!…と、言っても、彼女の方もソレは気になるようで。


何度言われても、答えは同じなのに。


「だから―――…、」と、
口を開こうとした瞬間、こちらへボールが飛んできた。
部活中の…サッカー部?

すみませんと、遠くから大声を出して、部員の一人がボールをとりに来た。
ボールが手元に戻ったら、礼を1つして、すぐにグランドへ戻っていく。





そのボールに気をとられていたからだろう。
誰かがこちらへ来ていることに気がつけなかった。




ボールをとりに来た人の、3人の制服を見る目線が外れたことを確認して、出しかけた言葉の続きを口にする。


そういえば、3人とも違う制服だ。並中・緑中・黒曜中で、並中はともかく、他2人の制服を着た人は何なのかと変に思われたらしい。




「全然、そういうのはないよ。向こうだって―――…」





そう言った瞬間。
校舎の陰から、あの人が見えた。


















質問に1つ答えたら、もう良いだろうと、3人の前から去ろうとした。


が、何故か3人は僕について来る。


「なんでもないって…じゃあ、何で会ってんだよ」


しつこい野球バカ。口にするのもまんどうになり、心でつぶやく。


そんな質問、決まっているだろう。


「六道骸の関係者だから。」


それ以外に何がある?


それから黙り始めた草食動物達。
当たり前のことを答えただけだ、僕は。


「でも――…少しはそういう気はないんですか?」


あまり質問してこなかったくせに。そう口にしようとしたが、黙って質問に答えてやろうとする。
…と、サッカー部員が目の前を通り過ぎて行った。
ボールを遠くにやってしまったらしい。ソレを追うことに夢中そうだ。


謝りながらボールの元へ行く彼など気にせず、ただ自分の意見を言った。


「全然。そういうのはないよ。向こうだって……」


サッカーボールをとりに行く彼に気をとられすぎていたのか、そこに人がいることに気がつかなかった。



校舎と校舎の間の道の、曲がり角を曲がると、


そこに彼女がいた。








ボスと、嵐の人、雨の人……それに、あの人。


2人はボス達にあえて、嬉しそうにしているけど、私はなんでか―――…、胸が苦しい。








草食動物達のクラスメートに、その友人――――――……それに、あの子。
向こうの女子2人と草食動物達は、互いに会えて嬉しそうだが、僕は少し、気分が悪い。








なぜだろう。思ったことを言ったのに。
言った言葉に後ろめたさが。


あの人の顔が見れない。







なぜだろう。考えていたことを言っただけなのに。
言った言葉に後悔してる。


あの子の顔が見れない。








「見回りの途中だから」と、あの人がこの場から立ち去ったことに、少し安心した。








理由をつけて、この場からすぐに立ち去りたかった。








あの人を呼び止めようと、ボスはあの人の名を呼んだ。
でも、あの人が立ち止まる気配はない。






「どうしたんですか?クロームちゃん。」


どうしたのと言われても、分からない。




どうしたのか、あの人を見たときから分からなくなった。






言った言葉は戻せないから、


だから、言うんじゃなかったと心のどこかに思っている自分がいる。





会ってるけど、なんでもない。全然そういう気は無い。


口にするんじゃなかった、あんなこと。
そう思う理由が、まだ分からない。




とりあえず、今は、どこまで聞かれていたのかが、ただただ心に引っかかっていた。






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