雲髑←骸風味(?)
12月直前の11月下旬という設定です…


















12月まであとわずか。








12月といえば、たくさんのイベント。


クリスマスに大晦日…いや、さんなものよりも、もっとずっと大切なことがある月。






彼女の 誕生日。






何を渡したら喜んでくれるだろう。
服?アクセサリー?美味しいお菓子?
きっと彼女ならどれでも少し顔を赤くして、笑顔でお礼を言ってくれるに違いない。






そんなことを考えているうちに、約束の時間が来た。
今日は彼が僕を家に呼んでいる日。
僕のことを毛嫌いしている彼が、僕を家に入れるなんて珍し過ぎること。
まあ、きっと彼女絡みだろうと予想は出来ている。




さあ、向かおうか











*******




室内に入ろうとするだけで、香る畳の良い匂い。
日本の建物は良いなと実感出来る場所。……主が彼でなければ。


僕を呼び出した本人なのに、無愛想に何も言わずにこちらに目を向けるだけ。感じの悪い。
仕事帰りなのか、スーツをきっちりと着ていた。
その近すぎず、遠すぎない所に部下の草壁哲矢がいて、そしてその近くに……………


「こんにちは、雲雀恭弥。…おや?クロームも来ていたのですか?」


「はい、骸様。」


返事をするクロームに対して、挨拶をしても何も言わない呼び出した本人。
てっきり、クロームの誕生日についてとかだと思っていたが、彼女がいるということは違うということだろう。
彼女は何でいるのだろう?






「それで、何故僕は呼ばれたのですか?」


たいした用事でもないだろうと思っていたが、クロームがいるということで、何かが違うと、心の中で戸惑っていた。




「………………………。」


何かを言おうと小さく口を開いては、閉じて。開こうとしては開かないままで……。そんな雲雀恭弥を待つことしか出来なかった。「何かあったのですか?」と、聞くのは簡単だったが、どうもそんな空気ではない。


「……………。」


「……………恭さん…。」


長い沈黙の中、草壁哲矢が名を呼ぶと、我に帰ったかのように、雲雀恭弥は真っ直ぐとこちらを見て、口を開いた。「………凪と、……結婚したい。」








頭と耳がついていってなかった。


結婚?凪?クローム?


数秒間、雲雀恭弥の言葉を頭の中で繰り返してみた。


結婚………何故今?




「どうしてですか?」


2人がそういう仲というのは知っていた。
認めたくなかったけど、認めていた。
2人もそれなりの年だし、聞いて疑問に思うことなど、本当はなかった。だけど、何か言わなければと思って出てきた言葉が「どうして」だった。




「………それは………」


また彼は口ごもり気味で、先ほどよりも重い沈黙が来るのかと思ったが、今度はクロームが話を始めた。




「…骸様………。…あの、………私のお腹のなかに…、子どもがいるんです……。」






次は言葉が出なかった。




何と言って良いのか分からず、うつむき、自分が座っている畳を見つめた。




「子どもが産まれるから…結婚したいのですか……?」


「……はぃ…」


「いつか結婚したいと思っていたし、凪との子どもなら…とは思っていたよ…。順番が違うけど……」


クロームの声も、彼の声ですら恐る恐るという感じだった。


「結婚したいんだ……」




先ほど言った言葉を繰り返した。
何か言わないと。何か言わないとと思って、自分の口から出たのは、「…………納得できません。」


反発する言葉だった。




「君たちがそういう関係というのは僕も知っていましたし、いつかそうなってもおかしくはないのではないかと少し思っていました。でも、おかしくないですか?子どもができたからとか……いや、産むなというわけではありません。


しかし…………やっぱり…………


と、いうか、雲雀恭弥。君は何ですか?さっきの言い方。結婚を許してもらいたいのなら、両手をついて、頭を下げて『結婚させてください』くらいのことを……」




プライドの高い彼だから、人…それも世界一と言ってもいいほどに嫌っている僕に頭を下げるなんて、するわけがないと思っていた。
でも、彼は僕が言い終わらないうちに、両手を畳について、畳にくっつくのではないかというくらいに頭を下げていた。






「凪と、結婚させてください。」




本当にするなんて思っていなかった。どうせキレて、襲い掛かって来て、うやむやになって、今日のところは……と、なるのを期待していた。


でも彼は僕に頭を下げた。
そんなにもクロームを大切に思っているのだと実感してしまったことや、
そうやって頭を下げる彼を、たった一つの目に涙を浮かべて、嬉しそうに彼を見つめる彼女が








気に入らないと思った自分が嫌だ










「雲雀恭弥………クロームが大切ですか?」






そう聞くと、一度うなずいて「もちろん」と言った彼に向かって、三又槍を突きつけた。






「それなら、僕に勝てたらということで。」




少し間を置いて、ニヤリと笑みを浮かべた彼は予想通りだった。




「………あぁ、……やっぱり。」








幸せそうな彼女を見るのは幸せだった。








「僕もこっちの方が 良い……」






でも、今彼女が彼に向けた幸せそうな笑顔は








三又槍とトンファーがぶつかる音が響いた。


「骸様…!!…恭弥…!」


止めようとする言葉をかけるだけで、本格的に止めようと彼女がしないのは、僕の心情を察しているのか。


どのみち、今回ばかりは本当に止めてほしくない。






どんな贈り物をしても見られないと気がついた自分は不幸せだと思った。











この家の崩壊、決定。








もどる