凪サイドは指定なしでいいと思う、続きの恭弥サイドがPG12




奪われて… Side凪



 多分、初めての夜を向かえた理由は、歳相応の好奇心とか駆け引きだとかそんな感じだった。
雰囲気にも飲まれていたのは事実で…でもそれ以上に、その場の空気がこんな世界に住んでる訳だから、いつまでもウブなままではいられないと言う焦りも孕んでいたんだと思う。
 その時は、知人とか守護者としての仲間とかそんな言葉が似合わないあなたも、不思議だけれど、名目上はそれ以上でもそれ以下でもなかった。



 私に触れるあなたの手があまりにも優しくてそれがとても恐かったわ、と何もなくても一緒にお風呂に入るような関係になった今だから、浴室でふと漏らす。すると、彼は珍しく明からさまに顔をそらした。

「覚えてないよ」
「うそ」
「………ついてない」

 歯切れが悪い彼の泡立つ髪に、ここぞとばかりに手を伸ばして、独特の形にした後「キューピーさん」と言うと、彼は擬態音が響きそうな程、ムスッとして溜めていたお湯をかぶった。目にも止まらぬ早さで。


「何がしたくて、何が言いたいの?」
「今は…何もしたくないわ」


 もう一度、髪に手を延ばそうとすると、それを制し、鏡越しに眉間に皺を寄せて睨む彼がいる。
 じっと見つめる拗ねた瞳が何だかおかしくて、くすくすと笑いながら、後から彼の肩に触れ、腕に頬を寄せると、やっと表情が少し和らいだ。


「恭弥…、あの夜、あなたの優しさを知ってしまったのよ」


 翌日、本当に自分の身体どころか、貞操にまで執着がない、と起き抜けに私を叱ったあなたの矛盾が愛しい。


 あの頃、欲しいものを欲しいと言わなかった私だけれど、少なくとも、嫌なものは嫌だと言えたと思うの。あなたはもうそれに気付いているんじゃないかしら?


「私は心まで奪われてしまったのね」


 そう微笑むと、彼は困ったような、だけど優しい目をして振り返る。


「凪、何もしたくないって言いながらそれはないよ」


 彼は私の額に軽くキスを落とすと、君がそんなこと言うからもう上がる、と先に出て行ってしまった。



 愛されてるのは分かっているから、いつから私を好いてくれるようになったのか聞いてみたい。

でも、きっと簡単に教えてはくれないのよね、恭弥。




 To Be Continued...


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